塩野義製薬
ロイヤリティーで連続最高益 国内事業の回復が課題
2018/9/12 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央
抗HIV薬を中心としたロイヤリティー収入が伸び、最高益を更新し続ける塩野義製薬。足元の業績は好調ですが、国内医療用医薬品事業は主力製品の特許切れで売り上げが減少しています。
3年連続増収増益 ロイヤリティー収入が貢献
「創業140周年という記念すべき年に、初めて純利益で1000億円を超えることができた」塩野義製薬の手代木功社長は、2018年3月期の決算説明会で声を弾ませました。薬価引き下げや主力品の特許切れで多くの製薬企業が苦戦を強いられるなか、塩野義の業績は好調です。
17年度の連結業績は、売上高が3447億円(前年度比1.7%増)、営業利益が1152億円(6.5%増)。増収増益は3年連続で、各利益は過去最高を更新し続けています。
好業績を支えているのは、ライセンス先の企業からもたらされるロイヤリティー収入。英ヴィーブヘルスケアに導出した抗HIV薬「テビケイ」と、それを含む配合剤「トリーメク」によるロイヤリティー収入は、前年度から41.2%増えて1000億円を突破しました。
1回の経口投与で治療が完了することで話題となったインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」関連でも、共同開発を進めているスイス・ロシュから約180億円を受領 。英アストラゼネカから受け取っている高脂血症治療薬「クレストール」のロイヤリティーも合わせると、総額は1550億円にのぼり、連結売上高の4割以上を占めています。
塩野義の収益力は「優等生」を圧倒
利益に直結するロイヤリティー収入は、業界屈指の収益力を支える源です。17年度の営業利益率は33.4%と、上場製薬企業33社の平均(14.3%) を20ポイント近く上回りました。高収益体質で「製薬業界の優等生」と称されるアステラス製薬(16.4%)をも大きく引き離しています。
17年度の自己資本比率 (総資産に占める自己資本の割合。経営の安全性を示す)は83.7%。国内最大手の武田薬品工業(49.1%)やアステラス製薬(68.3%)と比べても、経営基盤の強さは際立ちます。
国内事業は減収続き 事業基盤の強化が課題
一方、課題となっているのは国内事業です。13~17年度の間にロイヤリティー収入は119.2%増加したのに対し、国内医療用医薬品の売り上げは17.3%減少。13年度は1683億円だった国内医療用医薬品の売上高は1392億円まで減少しました。
国内の主力品だったクレストールは、ピーク時の15年度に国内で437億円を売り上げましたが、17年9月にオーソライズド・ジェネリック 、12月に通常の後発医薬品 が参入。この影響で17年度は293億円に減少しました。
1年を通して特許切れの影響が効いてくる18年度は97億円まで減る見通し。国内医療用医薬品の売上高は14.3%減って1200億円を割る予想です。
18年度以降は、3月の発売後2週間で24億円を売り上げたゾフルーザや、ADHD治療薬「インチュニブ」、抗うつ薬「サインバルタ」、オピオイド誘発性便秘症治療薬「スインプロイク」を中心に売り上げの拡大を図ります。
外部資源の獲得にも力を入れる方針で、18年度は200億円の投資を計画。疼痛・神経領域を中心に早期パイプラインの拡充や新規技術の導入を進めます。国内でペプチド原薬を製造する体制も整えており、ペプチドリームと積水化学工業との合弁会社「ペプチスター」は、19年9月に稼働予定です。
製薬企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化するなか、業績好調の塩野義は将来に向けてどんな策を打ち出すのでしょうか。次なる一手に注目が集まります。
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